本報告書は,昭和43年から福岡県教育委員会・九州歴史資料館が実施してきた大宰府史跡の発掘調査のうち,大宰府政庁周辺官衛の蔵司地区丘陵部に関する正式報告書にあたります。
平成21年度から令和3年度までの15年間にわたる蔵司地区の発掘調査の結果,丘陵部西側では礎石建物SB5000の下部構造や雨落ち溝等を把握するとともに,それを遡る大型掘立柱建物群や多量の被熱鉄製品を確認しました。丘陵東側では逆「コ」字状配置の総柱礎石建物群,および先行または併行する掘立柱建物群を確認しております。また丘陵南側の狭小な平坦面においても掘立柱建物や礎石建物,および付随する区画施設や溝,瓦溜まりなども確認されました。
これらの成果によって,これまでほぼ未解明だった蔵司地区丘陵部に関する古代官衛の変遷を明らかにできたとともに,蔵司地区官衛の役割や重要性についての知見が蓄積されました。