概要
本報告書は、昭和46年度から九州歴史資料館が進めてきた大宰府史跡発掘調査の中で、大宰府政庁の周辺に広がる官衙地区のうち、大楠地区に関する正式報告書の第2冊目である。
本書では、土坑・土壙墓・その他落込み等の遺構の報告を行い、続いて、土器・瓦等の出土遺物について報告を行い、 巻末に不丁地区出土遺物の補遺も掲載している。
遺跡の年代決定等に重要な情報を持つ土器・陶磁器・瓦塼類のうち、土器・陶器類では8世紀代から10世紀代ごろの資料が大半を占めており、 それより新しい時期の遺物は少量である。また、8世紀よりも遡る資料も一部にみられるが、基本的には埋没段階の混入等によるもので、概ね 第Ⅱ期大宰府政庁の段階に併行する遺跡であるといえる。
また、製塩土器、漆付着土器、須恵器擂鉢、鍛冶・鋳造関連遺物などは、不丁地区での膨大な出土量に比べると少量であるが、大楠地区の性格を推定する上では 重要な資料といえる。
これまで、大楠地区は小型の建物や柱穴規模が小さい建物が多いことから、官人居住域とする見解も出されているが、遺構の再検討により不丁地区に匹敵する 数の建物が存在することが判明し、出土した豊富な遺物などからも、遺跡の性格については再考が必要となっている。